レム睡眠行動障害
不眠で受診される方は多く、その原因はさまざまです。今回はレム睡眠行動障害のお話です。
睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠があり、眠りについてからは(ノンレム睡眠→レム睡眠)のサイクルが90〜120分周期でくり返しているとされています。入眠直後はノンレム睡眠の割合が多く、朝に近づくとレム睡眠の時間が増えてきます。レム睡眠の時に夢をみるといわれており、寝言が聞かれるのもこの時間帯です。通常、レム睡眠の時には手足の筋肉の緊張が抑制されている(筋肉に力が入らないようになっている)ため、起き上がることはできないのですが、レム睡眠行動障害の患者さんではこの抑制がうまく働かないために、夢の中での行動と同じような行動をとってしまいます。例えば、大声で寝言を言ったり、壁をけったり、一緒に寝ている人を殴ったりするため、困って受診することが多いです。
50~60代以上の方に多いとされていますが、10〜20代の若い人にもみられ、約半数で原因が不明です。パーキンソン病やレビー小体型認知症を伴っていることも多く、先行する症状としてレム睡眠行動障害が見られることもあります。病歴をしっかり聞くことで、診断は比較的容易です。睡眠中の手足の筋緊張抑制機構(脳幹の青斑核や縫線核、巨大細胞性網様核などの関与が推定されています)の障害が考えられるため、念のため頭部MRIでの精査は必要だと思います。治療はクロナゼパムが効くことが多く、自験例では90%以上の方でよく効いています。
どうでしょうか。夢と現実で同じ行動をとってしまう不思議な病気です。最近では約30%の方でうつ病を合併することもわかっており、レム睡眠行動障害の病態解明が、いろいろな神経疾患の診断や治療の糸口となる可能性がありそうです。