妄想
認知症の方およびご家族は、もの忘れそのものではなく、もの忘れに伴う症状(行動・心理症状=BPSD)に困らされることが多いように思います。BPSDの一つに妄想があります。
妄想。辞書をひいてみると、「根拠もなくあれこれと想像すること」と説明されており、私自身も幼いころはしょっちゅう、とりとめのないことを想像していたように思います。認知症疾患診療ガイドラインには、妄想とはBPSDにおける精神病様症状の一つで「訂正のきかない誤った思い込み」であり、健忘や誤認などを背景に心理的要因などが加わって生じるとされています。アルツハイマー型認知症では健忘を背景とした、もの盗られ妄想や被害妄想、レビー 小体型認知症では誤認や幻視・錯視を背景にした嫉妬妄想や幻の同居人妄想などがよく知られているようです。いずれの妄想でも、場合によっては近親者との人間関係を壊しかねないため、治療の必要性が高くなります。幸い、リスペリドンやブレクスピプラゾールなどの非定型抗精神病薬がよく効きます。