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Brain fog

[2025.10.28]

日々の外来診療で、なかなか解決方法が見いだせない症状を訴える患者さんに出会うことは、実は珍しいことではなく、解決のためには、自分にとって新しい知識をどんどん取り込んでいかないといけません。手術に関わることばかり考えていた勤務医時代とは、また違った角度から勉強する毎日です。Let’s go & grow together!

Brain fog (ブレインフォグ)とは、文字通り頭に霧がかかったような状態で、思考や記憶、判断力、集中力が損なわれるため、普段は問題なくできていた作業や仕事が困難になります。様々な病気や病態で現れる症状で、睡眠不足、自己免疫疾患、低血糖状態、低栄養状態、自閉症、不安障害やうつ状態、周産期や更年期の女性ホルモンバランスの乱れ、慢性的なストレス過多、などで見られます。近年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症として有名になりました。治療法は未だに確立されていませんが、原疾患の治療はもちろんのこと、十分な休息と栄養、規則的な生活リズム、適度の運動、などが推奨されています。

COVID-19後遺症(Long COVID)としてのブレインフォグですが、なぜおこるのかは、まだはっきりわかっていません。そのため、治療法も確立されていないのが現状です。その中で、先日(2025年10月1日)、横浜市立大学大学院医学研究科生理学の高橋琢哉教授らの研究グループは、神経細胞同士の情報伝達のやりとりの要であるグルタミン酸AMPA受容体が、Long COVIDとしてのブレインフォグに関わることを世界で初めて報告しました。

COVID-19罹患後に認知機能の低下で就学・就業に支障が生じている患者さん30名のPET画像を、健常者のPET画像と比較したところ、COVID-19罹患後に認知機能の低下をきたしている患者さんの脳内AMPA受容体の量が、同年齢帯の健常者よりも脳の広い範囲で増加していることが分かったというものです。AMPA受容体は、脳や中枢神経におけるグルタミン酸受容体の一つで、神経細胞間の情報伝達を担い、シナプスの可塑性を通して記憶や学習に深く関係していますが、過剰に増えると神経細胞同士のつなぎ目(=シナプス)の働きが崩れ、認知機能障害につながる、とされています。また、てんかん、統合失調症、うつ病、双極性障害など、多くの神経・精神疾患とも関連していることが研究で明らかになっています。

上記報告では、シナプスにおけるAMPA受容体の過剰増加を抑えることで、ブレインフォグが改善する可能性が示唆されたと思います。AMPA受容体の働きを抑える薬はすでに抗てんかん薬として使用されており、今後の臨床応用に期待です。

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